好きな人としたい

 

「連絡先まで…。これはもう冗談ではないと思っていいわね」

 

 

 

瀬野さんに送ってもらったあの日の週末の午後。
佳奈と近くのカフェでお茶をしている時に、連絡先を交換したことを話した。

 

 

 

「あんた、本当にこれからどうするの?」

 

「これからって言われても……」

 

 

 

カップの半分をきったカフェオレを、佳奈はグビッと全部飲み干して私を見据えた。

 

 

 

「さっさと結婚しなさいよ」

 

「………は?」

 

「結婚して後悔するなんてこと絶対に起こらないって断言出来るくらいいい男よ、瀬野遥は」

 

 

 

佳奈は前髪をはらって追加でケーキを注文していた。
私は、頼んだカフェモカにうつる自分の顔を見つめた。

 

 

……どう見ても、あのイケメンの横にはふさわしくないな。

 

 

 

「結婚は、自分に合った人としたいな」

 

「自分に合った人ぉ?はぁ?」

 

「だから、何て言うの?レベルっていうか…」

 

「なるほど。顔面の話ね」

 

 

 

うん、って言いづらくてとりあえずカフェモカを飲んだ。

 

イケメンな人と結婚出来るならしたいけれど、気後れとか周りからの声とか、絶対気にしちゃうから。

 

それに、

 

 

 

「ちゃんと好きな人としたい」

 

 

 

私は別に瀬野さんの事が好きじゃない。

 

憧れはするけれど、これは社会人としての尊敬であって、決して好意ではない。

 

 

 

「あんなイケメンとずっと一緒にいたら、すぐ好きになれるでしょ」

 

「そうかなあ」

 

「そうだって。愛想尽かされる前にいかなきゃ」

 

 

 

愛想尽かされる方が私的にはいいんだけどなあ。

 

言おうとしたら店員さんが佳奈が頼んだケーキを運んできたので、その言葉は飲み込んだ。

 

 

 

「アンタのその意地がいつまで続くか見物だね」

 

 

 

ニヤリ、と少し瀬野さんに似た笑みを浮かべた佳奈は、ケーキを口に入れた。
佳奈と駅でわかれて、スーパーに寄って、家に帰った。今日はコンビニに寄らなかったけれど、いつものマスクの彼はいるみたいだった。

 

 

久しぶりに自炊をして、テレビをつけてなんとなく佳奈が言った言葉を思い出していた。

 

 

 

“すぐ好きになれるでしょ”

 

 

 

なんとなく4年前の自分を思い出すけれど、よく思い出せない。

 

【好き】って気持ちが、もう思い出せなくなっていた。

 

最後に恋をしたのは、いつだったか。誰に恋をしたのか。全く思い出せなかった。

 

確か人並みに恋をして、その人と話せたら友達と騒いだりしたのに。本当に思い出せなかった。

 

別に思い出したくないほど辛い恋愛でもなかったはず。告白もして付き合ったりもした。

 

なのに、全然思い出せない。なんでだろう。

 

 

 

「………」

 

 

 

考えるのがどんどん面倒になってきたから、なんとなく携帯を見たら、不在着信1件とメールが1件来ていた。