彼の家で

隣に乗ってくる瀬野さんは、大人の男の人って感じで何故こんな人が私にプロポーズしてきたのか、また不思議になった。

 

 

「ん?なに?」

 

 

どうやらボーッ、と瀬野さんを見つめていたらしい。

 

 

「あ、いや、すみません」

 

「いいけど。あんまり見ないでね?キスするから」

 

「……」

 

 

とりあえず無視して寝ようかな。
特に何もしてこなさそうだし(多分)、何かしてきそうだったらぶん殴るし(絶対)、大丈夫でしょ。

 

瀬野さんには何も言わず、バレないように目を閉じた。

 

――――――………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……、…?」

 

 

どうやら本気で爆睡してたようで。

 

目を開けると、そこはどこか分からない駐車場だった。見た事もない高そうな車ばかり並んでいた。

 

 

「………あれ」

 

 

隣を見ても、あのイカレタ男の姿はない。

 

もしかして、置き去り?こんな、よく分からない所に、仮にもプロポーズした相手を、置き去り?

 

 

「嘘でしょ……」

 

 

ため息を一つついて、シートベルトを外して、車から降りた。

 

このままいると、もしかしたらどこかに売り飛ばされたりするかもしれない。やっぱり、プロポーズは完全なる嘘だったのだ。

 

危うく、本気にするところだった。

 

瀬野さんが戻ってくる前に早く家に帰ろう。

 

駐車場を出ると、そこは見た事のない道路。いよいよ帰れないかもしれない。

 

まずこの駐車場はなんだったのか。振り返る、と

 

 

 

「……は?」

 

 

それは、高級マンションであろう建物の駐車場だったのだ。

 

もしかして、瀬野さんの家?

 

確かに送る、と言われたけど家の場所も教えずに私は寝てしまった。そりゃ、私の家に着くはずがない。

 

時刻を確認すれば、10時過ぎ。せっかく10時前に家に着くと思ったのに、残念。

 

 

とにかく、この道を辿ってどこかでタクシーを拾って帰ろう。道に向き直って、足を進めようと、した。

 

 

 

 

 

 

 

「――――どこ行くの」

 

 

ふと、後ろから低い声が聞こえた。