出会い即プロポーズ

「……え?」

 

「合ってる?」

 

「あ、はい…」

 

 

そこにいたのは、あの瀬野遥さん。
私はその凄い彼に名前を知られていた。まさか、女性の名前は全て覚えているのか?そこまでジェントルマンなのか?

 

 

「俺は、瀬野遥」

 

「(知ってます)」

 

 

ペコリ、と頭を下げておけば、小さく笑われた。その笑顔が破壊力満点で顔が赤くなるのが分かった。

 

 

「いつも、残業してるよね」

 

「え、あ、仕事が、遅くて…」

 

「そんな感じしてる」

 

 

クスクス、と笑われた。
あれ、馬鹿にされてる…?優しい人だって、みんな言ってたのにな。

 

 

「あの、何か御用ですか?」

 

「うん。話があって」

 

「話?」

 

 

まさか、お付き合いして下さい、とか?
なんて妄想が頭を駆け巡った。まだこんな妄想が出来るなら、恋愛や結婚を諦めていないのかもしれない。

 

 

 

瀬野さんは、微笑を浮かべて、想像以上のことを言ってのけた。
「俺と、結婚しよう」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……は?」

 

 

やっと口に出た言葉は、なんとも可愛くない言葉であった。それにも瀬野さんは、笑顔を浮かべた。

 

私の耳が正しければ、結婚、と言った?

 

 

「…あの、え?」

 

「ん?」

 

「結婚、ですか?」

 

「うん、結婚」

 

 

結婚!!!!!?????
やっと脳が言葉を理解し、頭がパニックに陥る。あの瀬野さんが、私と結婚!!!???

 

 

「けけけけけけけ結婚ですか本当に!?」

 

「そうだよ」

 

 

ニコニコ、と余裕の笑顔で私に求婚する瀬野さん。なんだ、何を企んでいるんだ、この男。

 

そこで冷静になった。
もしかして、よく漫画とかである女避け?

 

女避けの場合、結局あんまりうまくいかないと思う。漫画だとそのままうまくいく、とかあるけど、私はそこまで魅力がある女ではない。23歳にして睡眠と休息を求めている女だ。

 

 

「あの、何故ですか?」

 

 

その言葉に、瀬野さんはキョトンとした。

 

 

「それはもちろん、美結さんが好きだからだよ」

 

 

その言葉に、今度は私がキョトンとした。

 

 

…………好き?
「え、好き……ですか?」

 

「うん」

 

「女避けとかではなく…?」

 

 

それに、ハハ、と小さく笑い返された。

 

 

「女性はみんな、俺のことを高く評価してるけど、実際そんなにモテたりしないよ」

 

「それはみんな、瀬野さんがカッコよすぎて近付けないんじゃ…」

 

「だとしたら、女避けなんて必要ないでしょ?」

 

 

確かにそうだ。噂されても、寄ってこないのなら女避けなど、必要ない。
でも、そしたら、理由はひとつしか思い浮かばない。

 

 

「美結さん」

 

 

その声に、私は顔を上げた。

 

 

「好きです。結婚して下さい」、

 

 

そう言って、瀬野さんは私を抱き締めたのだ。